すこし離れたところから見た「ガーすけと桜の子」にまつわるあれこれ

いまさらですが、「ガーすけと桜の子」の感想文のようなものを提出します。全部個人の感想です!よろしく頼むぜ!

 

 

今作は大阪の初演時点で感動できるというレポが出回っていたましたが、東京公演が続いてかなり批判的な意見が目立つようになりました。映画も演劇も小説も「つまらなすぎる」ということで賛否両論があることは基本的にないので(つまらない作品について真剣に議論する人が少ないので)、なんだか不思議な感覚でした。

作品の演出、脚本面の良し悪しについては既にかなり多くの方が書いていて、ついでに考察についても色々な方が書いているので、もう私が書けることはもう何もないです。ということで、少し違った形で書けないかなーと思って、作品からは一歩引いた視点で、作品と矢花黎、そして彼のファンについて他担から見て思ったことをかければと思います。

矢花黎という人間と「表現」

ジャニーズは他の芸能事務所と比較して、ダンスや歌のスキル、演技やビジュアルよりもタレントが持つ個性を重視する傾向があるように思えます。デビュー組を見れば直木賞作家とパリコレモデル、日本アカデミー賞俳優が同じ「アイドル」というジャンルでステージに立っています。そんな芸能事務所はおそらくジャニーズだけです。「歌って踊る」こととは一見無関係に思えるジャンルに挑戦し、そこでの才能が評価されているタレントが数多くいることは、ジャニーズが「歌って踊る」ことよりもタレント本人の個性を活かすことを重視している証拠のように思えます。

デビュー前のジャニーズJr.でもその傾向は同様で、その中でも矢花黎というタレントは特に「歌って踊る」以外の才能に富んだタレントであると言えるのではないでしょうか。彼は音楽大学に在籍し、プレイヤーとしてはもちろん、グループのサウンドプロデュースも行っています。サウンドプロデュースをするアイドル自体、今時珍しくはないのですが、彼の一番の才能はサウンドプロデュースを行った後にあると私は考えています。さまざまな公演が終わった後、彼のブログには、今回の楽曲をどのように制作したのか、どこに何の音を入れ、それが曲全体でどのように作用しているのかをわかりやすく解説しています。動画投稿サイトの動画でも、ここまで仕事が多忙になる前は、定期的に音楽機材から、音源制作の裏側まで、多くのテーマを噛み砕いて説明した動画を投稿していました。こういった、「表現のこだわり」をわかりやすく説明し、彼の考えていることをマスメディアを通さずに、直接ファンに伝える技能が彼の持つ本当の才能であると考えます。

彼のことを好きになるきっかけは色々なものがあるでしょう。端麗な容姿、人柄の良さ、甘い歌声…どれも素晴らしい才能で、彼を構成する要素です。しかし、その何が好きだとしても彼を知るという事は彼の「表現へのこだわり」を知る事と同義なので、他のメンバーと比べて彼が表現活動についてどのようなこだわりを持って作品に挑むのかについて、とりわけ関心を持っている人が多いように感じます。そういったやや特殊なファン層とが求めているものは、必然的にしっかりと作り込まれた作品になるので、どちらかと言うと気軽に笑って泣ける作品である「ガーすけと桜の子」のストーリーがミスマッチしていたことが今作の評価に繋がったように見えました。もちろん全員ではないですが。

アイドルを求めているのか、役者を求めているのか

今作は、かなり当て書きの要素が強い作品でした。それは龍之介という役柄だけに留まらず、小道具やアドリブにも主演の「矢花黎」の人物像が色濃く投影された演出が頻発していました。そのどれもが、彼のパーソナリティについて知っていないと理解できないもので、今作の観客の大半が矢花黎または彼の所属する7 MEN 侍のファンであることを前提に演出されたものであることは明らかでした。しかし、その観客は全員が「矢花黎」を見に行っているわけではないようです。彼が役者として真摯に芝居に向き合っている姿を雑誌取材で示しているので、役者として、龍之介としての「表現」を見に行っている人も少なくないです。そういうスタンスで見に行った人にとって「ジャニーズのアイドル 矢花黎」の要素を多く演出されることは、彼の「大手事務所のアイドル」という属性に演劇の価値を持たせるようで、役者としての彼の価値を過小評価されているように感じ、憤りを感じるのではないでしょうか。

もちろんジャニーズの演劇を見るにあたって、役者がアイドルだから見に行っているという人も多いでしょう。私もそっちのタイプです。それでも、これまで表現活動へのこだわりを多く示してきた“矢花黎のファン”は、彼が役者としてではなくアイドルとして舞台に立たせたことにガッカリしてしまう人が多いことは納得がいきます。

芝居について

作品について全然書けなかったので彼の芝居について感じたことを…

作中、住民の抱えている問題が独立していること、それぞれの住民の人物像がバラバラであることなどを踏まえると、全体的に「どんちゃん騒ぎ」であることが求められるような作品であると思います。だから足音はずっと大きな音だし、誰かにスポットライトが当たって話すようなシーンでも誰かが動いている事が多いし、セリフも大きな声である事が多いのかなと感じました。冒頭のモノローグの部分の芝居を100だとすると(モノローグを100で演じること自体珍しいことではありますが…)その後120、150とどんどん芝居の大きさが上がっていき、フィジカル的に大きな表現ができていたと思います。そういった話し方、態度が「どんちゃん騒ぎ」感を出していて、体力、声量ともにメキメキ鍛えられているなという印象を受けました。

 

ただ、これは私の好みの問題ですが、「足し算が上手い役者」を「演技がうまい」とはあまり思わないので、今作だけで彼の芝居が良いとはあまり言えないような印象です。(モボ未修です)ただ、何度も入っている人のレポを見ると大きく言い方を変えたりしている部分も多くあるようで、演出家の指導かもしれませんが、観客の反応を見ながら色々な表現に挑戦しているように見えました。そこは観客と対峙した状態で音楽を披露する、ライブアーティストらしく演劇を楽しんでいるんだなぁと思いました。

 

あ!あべこうじはめっちゃ面白かったと思います!でもいろんな人の地雷をぶち抜くスタイルだったのでこれも少しむずかしいですよねー

 

ぼんやりとしたイメージですが、彼はかなり間の取り方がうまいと美大駅伝の時から感じているので、もっとテンポの速い会話劇ベースのコメディとかが向いてるんじゃないかなぁと思いました。(暗い演劇よりも明るい演劇の方が向いてると思います)

やっぱ蓮見翔に書いてもらいましょう。スズカツ、中屋敷より蓮見翔。絶対お願いします。

 

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おやすみ〜…